【解説021】公立の小中の教科書採択の流れは「教科用図書選定審議会」→「都道府県教育委員会」→「市町村教育委員会が採択(8月末まで)」

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今回は主に小中の教科書の採択の手続きについて。義務教育諸学校で使用される教科書について、どの教科書を選ぶか、決定(採択)権は市町村の教育委員会にある。

文部科学省のWebページに詳しく書いてある。

教科書Q&A:文部科学省

必要な部分を抜き取って、図にすると次のようになります。

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まず年度の初めごろ、都道府県教育委員会は、教科用図書選定審議会という組織に教科書選定についての諮問(意見を聞くこと)を行い、そこから答申(教科書の選定資料の送付)をもらう(上図の①)。



それを受けて、都道府県教育委員会は市町村教育委員会に対し、助言や指導を行う(教科書の選定資料を送る。上図の②)。

それに並行して大体6月ごろ、教科書展示会が教科書センターと呼ばれる場所(都内に30箇所以上ある)で行われる(上図③)。なお、教科書展示会は一般の方もみることが可能だ。

都道府県からの指導の上、市町村教育委員会は8月までに公立の小中で使う教科書を選ぶ(採択する)ことになる(上図④)。

なお、手続き④の教科書の採択は4年に1回行われる。この教科書を使うぜと決めたら4年間は同じなのだ。ただし、採択をしない年でも「教科用図書選定委員会」や「教科書展示会」は毎年行われている。上の図のプロセス①〜③は毎年、④の採択は4年に1回ということだ。

ややこしいプロセスだが、教科書が無償であることからテキトーに選ばれても困るということで、手順が複雑になっているのだろう。



とりあえず「市町村の教育委員会」の採択の前に「都道府県の教育委員会」が立ちはだかり、いろいろと言ってくるんだなというイメージを持っておこう。

各自治体の教科用図書選定委員会の記録がウェブ上ですぐ見つけることができるので、イメージをもつためにも検索してざっと見ておくとよいだろう。

では演習。

(演習) 次の文の正誤判定をせよ。

(1) 義務教育諸学校の校長は、次年度に使用するための教科用図書を採択し、当該年度の3月31日までに教育委員会に届け出なければならない。

→(誤)いろいろおかしい。採択するのは「市町村の教育委員会」。「市町村の教育委員会」が8月末までに採択(これを受けて各教科書会社は次年度の必要部数を印刷する。売れる量がわかっているので、在庫を抱える心配がないシステムなのである)。



(2) 都道府県の教育委員会は、区市町村の教育委員会の行う教科用図書の採択に関する事務について、適切な助言又は援助を行うことができるが、指導を行うことまではできない。

→(誤)指導もする。都道府県が大きな力をもっているイメージである。

(3) 義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択は、当該教科書を使用する年度の前年度の8月31日までに行わなければならない。

→(正)あってる。

ちなみに、高校も同様の時期に必要冊数を報告することになっているようである。必要冊数を計算するためには、次年度にどれだけの生徒が何の科目を取るのか概要を知る必要があるため、1学期のうちに次年度の文系・理系等の選択をさせている高校もある。(適性を見定める時間を作るために、2学期中ぐらいできる制度にしてほしいが…)

高校の教科書採択についてはここまで触れてこなかったが、無償でないからか、義務教育ほどめんどくさい手続きではないようである。多くの場合は、各自治体の規約などで「各学校の選定委員会で校長が選定」→それを受けて「学校を設置した自治体の教育委員会が採択」という流れになっているようである。

(4) 公立学校で使用する教科用図書を採択する権限は、その学校を設置する区市町村又は都道府県の教育委員会にある。

→(正)正しい。(細かい例外をのぞいて)小中は市町村の教育委員会、高校は都道府県の教育委員会が採択する。

(5) 都道府県の教育委員会が4年に1回開催しなければならない教科書展示会は、教育関係者だけではなく、保護者や一般の人にも公開することができる。

→(誤)教科書採択は4年に1回だが、教科書展示会は毎年行われている。一般の人が見れるというのは正しい。なお、2011年には開催元が「校長」になっている誤りの文が出題されている。

教科書展示会は、小中高の教科書が並んでいる光景を見られて面白い。2018年の6月ごろにも開催されると思われるので、行ってみるとよいかも。

今回はやや複雑でしたね。おつかれさまでした。

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