【易しめ解説50】小中学校の目的は義務教育を施すこと、目標は10項目。その他校種の目的・目標も整理を

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ここでは、教育の目的・目標についてまとめます。

まずは全体像の把握を

目的・目標は校種ごとにあり、また教育基本法・学校教育法と両方に絡むものもあるため、細かい文言のチェックの前に、どの法律にどの校種の目的・目標が書かれているのか、全体像を把握するとよいでしょう。



まずは教育基本法の復習からです。

教育基本法の第1条,第2条

は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校などすべての校種に共通の目的(1条)・目標(2条)を述べたものであるため、抽象度が高めです。

教育基本法第5条2項

は、義務教育に絞った教育の目的が述べられています。これに対応する義務教育の目標については、学校教育法第21条にあります。

なお、教育基本法第1,2,5条については以前の記事

【易しめ解説45】教育基本法、理念系の条文4つ – きょうさい対策ブログ

で扱っています。チェックがまだの方は是非確認を。

校種ごとの目的と目標は、「学校教育法」の次の箇所にかかれています。この全体像が頭にあれば学習が進めやすいと思われます。

幼稚園……(目的)第22条、(目標)第23条

小学校……(目的)第29条、(目標)第30条, 21条

中学校……(目的)第45条、(目標)第46条,21条

高等学校…(目的)第50条、(目標)第51条

特別支援学校…(目的)第72条

※特別支援学校については目標の記載なし



小学校と中学校の目的・目標

小学校と中学校に関しては

・義務教育の目的(教育基本法第5条)

・義務教育の目標(学校教育法第21条)

の中身を校種ごとにちょっと調整したものが29条(小学校の目的)、30条(小学校の目標)、45条(中学校の目的)、46条(中学校の目標)となります。構成がややこしいですが仕方ありません。

記事45でも扱いましたが、義務教育の目的は教育基本法第5条に次のように書かれています。

教育基本法第5条2項

2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。

 

義務教育の目標は次の通り。義務教育は国が特に力を入れようとしているものであるせいか、目標が10項目もたくさんかかれてるんだなー、ぐらいの印象を持つぐらいにしておけばいいでしょう。全文の文言を暗記するのは無理ですからね。

学校教育法第21条

義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
二 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
三 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
四 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
五 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
六 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
七 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
八 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
九 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
十 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

 

では次に小学校の目的です。

学校教育法第29条

小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。

「心身の発達に応じて」は中学校と共通の文言です。小学生であることに配慮して基礎的なもの、と強調しています。目的の次は目標です。

学校教育法第30条

小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度において第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
○2 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない。

 

第1項は「具体的なことは義務教育の目標のところでしっかりかいたからそこ読んでね」と21条を再利用しますという宣言です。また、30条第2項は「そうはいっても幼い小学生だから生涯にわたって主体的に学習ができるように特に気をつかってね」と添えています。なお、この文言は中学校では消えます。



続いて中学校の目的です。

学校教育法第45条

中学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。

小学校の目的との違いは、「小学校における教育の基礎の上に」と小学校が土台ですよと追加されていることと、「基礎的なもの」とあった表現が削除されていることです。

学校教育法第46条

中学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、第二十一条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

 

これも小学校と同様、「具体的なことは義務教育の目標のところでしっかりかいたからそこ読んでね」と21条を再利用します宣言ですね。



 幼稚園の目的・目標

幼稚園の目的、目標は次の通りです。

学校教育法第22条

幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。

 

「保育」「発達を助長」など特徴的な用語が入っています。

学校教育法第23条

幼稚園における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
二 集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
三 身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
四 日常の会話や、絵本、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに、相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
五 音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。

 

「身体諸機能」あるいは「芽生え」という表現は幼稚園特有です。



高等学校の目的・目標

高等学校の目的・目標は次の通りです。

学校教育法第50条

高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。

小学校と中学校が「心身の発達に応じて」という表現であったのに対し、高校では進路という表現が加わります。

学校教育法第51条

高等学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
三 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。

 

「健全な批判力」は高校特有の表現になります。また、義務教育の目標で「将来の進路を選択する能力を養う」とあったものが「将来の進路を決定させ」と踏み込んだ内容となっています。

特別支援学校の目的

特別支援学校の目的は次の通りです。

学校教育法第72条

特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。

 

障害の例示や「自立」「克服」などという言葉が特徴的です。なお、特別支援学校の場合は目標は明示されていません。



(演習)

学校教育法は教育基本法改正に合わせ、2007年に義務教育についての目標を追加するなど今の形に大きく改正されています。それを受けて、神奈川教採では2009年と2010年の2回、教育の目的や目標に関する出題がありました。今回はその2題を、多少勉強しやすいように問題を修正して扱っていきます。

(演習1)

学校教育法の条文の抜粋として誤っているものを次の①〜⑤のうちから一つ選べ。(2009年実施,改題)
①幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を教育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。

②小学校は、心身の発達に応じて、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを目的とする。
③中学校は、小学校における教育の基礎の上に、学力の状況に応じて、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする。

④高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。

⑤特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。

(解)③

「学力の状況に応じて」ではなくて「心身の発達に応じて」が正しいです。義務教育ですから学力が高い低いはあまり重視しません。

(演習2)

学校教育法第21条の条文の中で掲げられている、義務教育として行われる普通教育の目標として最も適当なものを、次の①〜⑤のうちから一つ選びなさい。(2010年実施47)
①健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
②個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。
③集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに、家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
④生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する実践的かつ発展的な能力を養うこと。
⑤職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

(解)正しいのは⑤

これは他の校種の目標と混ぜた分離問題のため、神奈川教採の中では難度が高い問題です。正解できなくても落ち込む必要はありませんが、これを機に校種ごとに特徴的な用語については覚えておくとよいでしょう。

①これは幼稚園の目標です。「身体諸機能の」という表現から幼稚園であることを見抜けられるとよいです。

②「健全な批判力」は高校の目標です。

③「芽生え」という表現から幼稚園の目標であることがわかるとよいです。

④「実践的かつ発展的な能力」でなく「基礎的な能力」が正しいです。義務教育の目標(学校教育法第21条)は勉強面についてはすべて「基礎的な理解」「基礎的な能力」など基礎を重視した表現になっています。是非もう一度、見返してみましょう。

⑤「将来の進路を選択する能力」は義務教育、「将来の進路を決定」とあれば高等学校です。

今回はここまでです。

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