きょうさい対策ブログ

教員採用試験(教採)の対策をまとめます。教職教養解説もあり。

【解説004】憲法特有の4項目、教育基本法特有の5項目の整理を

解説001〜解説003では憲法がらみの内容を扱ったが、今回は憲法教育基本法を分離する問題を扱う。出題された際に得点できる可能性を高めるためにも、対策しておこう。

憲法&教育基本法についての解釈系と分離系問題

例年、東京都の教員採用試験の第一問は憲法あるいは教育基本法についての出題だ。

 

この第一問は出題年度によって2パターンに分かれる。「解釈系」と「分離系」だ。

「解釈系」とは次のような形式のことである。(解かずに眺めるだけでOK)

日本国憲法に関する記述として適切なものは、次の1〜3のうちのどれか。
1 「すべて国民は、法のもとに平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定されており、この規定は、いかなる場合においても、外国人に対して類推されるべきものではないという趣旨のものである。
2 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と規定されているが、この規定は、全ての国民が健康的で文化的な最低限度の生活を営みうるように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したものではないというものである。
3 「学問の自由は、これを保障する。」と規定されており、この規定は、学問研究の自由ばかりでなくその結果を教授する自由をも含むものであるから、大学教育の場合と同じく普通教育においても、教師に完全な教授の自由を認めることができるというものである。
 (2014年実施を短くしたもの)

(正答は2である)

この「解釈系」の場合、勉強していない事柄が出題されたとしても、常識的に違和感を感じたらバツ、という消去法で正答(あるいは2つまで絞る)にたどり着けることが多い。要するに、なんとかなる可能性がある、ということだ。

 

それに対して、次のような「分離系」ではきちんと暗記していないとちゃんと正答できない。(これも眺めるだけでOK)

次の記述ア〜オは、日本国憲法または教育基本法の条文である。このうち、日本国憲法の条文を選んだ組合せとして適切なものは、下の1〜5のうちのどれか。

ア すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

イ 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。

ウ 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。

エ 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。

オ 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益もしくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

1 ア・ウ 2 ア・オ 3 イ・ウ 4 イ・オ 5 エ・オ (2010年実施)

(ちなみに正答は2である)

 

「解釈型」よりも「分離型」で出題された時の方が難しいと言えるだろう。「分離型」の場合、文章はどれも正しく、実際にある条文であるので、ぼんやりと勉強した状態では正答できないからだ。そこで、

何が憲法で、何が教育基本法であるのかをはっきり覚えておく必要がある!

のだ。しかし、憲法は103条、教育基本法も18条あり、全部覚えるのは現実的ではない。そこで、この記事では2007年以降に出題実績のある内容に絞り、これさえ覚えておけば大丈夫じゃね?という条文・キーワードを厳選した。

 

2018年に分離型の出題があったときに確実に対応できるかはもちろん保障できない。が、丸腰で望むよりはましだろう。

 

日本国憲法特有の4項目

日本国憲法の内容として覚えておくべき4つのこと

・「全体の奉仕者」(第15条) ←教育基本法にはない言葉

・「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動をしてはならない。」(第20条第3項)

・「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」(第26条第1項)

・「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」(第26条第2項)

 

上の4つは日本国憲法のものであると強く覚えておこう。4つのうち2つは、形式的なことで覚えることもできる。日本国憲法は戦後すぐに作られているものなので、古い表現がちょいちょい混じっている。2つめの「国及びその機関」という表現は現在であれば「国及び地方公共団体」となっているはずだし、4つめの「子女」や「負ふ」という表現は現在では使われないだろう。残りの1つめ(15条)と3つめ(26条1項)は現在の法律に混ぜても違和感がないので特に注意して覚えておきたい。

 

教育基本法の前文と1条、特有の5項目

教育基本法は2006年12月に改正された。2006年以前の過去問は戦後すぐに制定された旧の教育基本法であるので注意を(そんな昔の過去問やるひとはいないだろうが…)。

教育基本法は全18条ある。厳選項目を紹介する前に、前文と第1条ぐらいは読んで慣れておきたい。

(教育基本法前文)

 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

(教育基本法第1条 教育の目的)

 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

 

では、教育基本法に登場する重要項目を5つ紹介する(このうち2つは上で登場している)。なお、以下の語句はすべて、日本国憲法には登場しない。

教育基本法の内容として覚えておくべき5つのこと

・「公共の精神」(前文)

・「人格の完成」(第1条)←これを目指すのが教育の目的である

・「崇高な使命」、「研究と修養」(第9条)←崇高な使命があるのでちゃんと勉強(=研究と修養)しようね、という条文である

・「第一義的責任」(第10条)←保護者の役割

・「政治的教養」(第14条)

 どれもよく見かけるものばかりである。憲法にはなく教育基本法にしかない、という点で試験場で活躍するはずだ。ぜひ覚えよう。

 

演習

では、「分離系」の問題を2つほどやってみよう。

 

(演習1)

日本国憲法の条文として適切なものは、次の1〜5のうちのどれか。
1 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。
2 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。
3 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。
4 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
5 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。(2015年実施)

 

→正答は5

(正答を導く流れ)戦後すぐできた憲法と2006年12月に改正された教育基本法を分離する問題。1は「人格の完成」があるので教育基本法。2は「子女」ではなく「子」となっているので教育基本法。3は?(でも戦後すぐつくられた憲法生涯学習のことはかく余裕ないんじゃね?ということで教育基本法かな?) 4は「政治的教養」で教育基本法 5は超頻出の日本国憲法第26条ですね。ということで正答は5。

 

つづいての演習。2017年実施の一番最近のものだ。ちょっと難しいかもしれない。

 

(演習2)

教育基本法に関する記述として、法令及び判例に照らして最も適切なものは、次の1〜5のうちではどれか。
1 第6条第1項に規定する学校においては、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めなければならないと定めており、教育を受ける者に対してこれらを行う義務を課している。
2 第6条第1項に規定する学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならないと定めており、その使命と職責の重要性から全体の奉仕者であるとしている。
3 家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者は子の教育について第一義的責任を有すると定めており、学校における教育をめぐって保護者と学校との対立が生じた場合には、その調整に際して家庭教育に優越的立場がある。
4 国及び地方公共団体が設置する学校による特定の宗教のための宗教教育の禁止を定めており、格技の授業に信教上の理由で参加しない児童・生徒に対して、学校が代替種目による措置を行うことは、特定の宗教を援助する効果を生じるので認められない。
5 教育は不当な支配に服することなく行われるべきものであるとともに、国は全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し実施しなければならないと定めており、国の教育内容への介入は必要かつ合理的な範囲で認められる。(2017年実施)

 

→正答は5

(正答を導く流れ)1は教育を受ける者に対して、進んで学習に取り組む義務ということだが学習に取り組めるのは権利じゃね?ちょっとわからん、ということで残す。2は前半はいいんだが、後半の「全体の奉仕者」というのが憲法の言葉なのでバツ。3は学校と家庭でトラブルが起きたら家庭に優越権があるというのが常識的にダメだろう。学校と家庭両者が協力しましょうならわかるけど。4は記事【001解説】でも扱ったが信教上の理由で生徒に代替種目をさせるのはOKということで選択肢はバツ。5は国の教育内容の介入というのが気になりますがまあいいか、というこで1〜5を検討して5が残ります。

この2017年出題の問題は「分離型」に「解釈型」の要素を混ぜたタイプの出題といってよいだろう。ちょっと難しい。

 

上の問題もそうだが、2017年実施の問題は選択肢を削るのが難しい問題が多い印象。問題数も数年ぶりに変化があり、作問担当者や方針が大きく変わったのかもしれません。 過去問を使いまわしにしないで、新しく作って平均点をもっと下げろ、という動きがあったのかもしれませんが、もちろん真相はわかりません。

 

今回は以上。おつかれさまでした。