【解説028】生徒への重い懲戒である退学・停学・訓告は校長が行う。また、義務教育の停学は絶対できない。

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まず懲戒について述べた法律を二つ紹介する。

学校教育法第11条(児童・生徒・学生の懲戒)

校⻑及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

懲戒はすごく重そうな響きだが、実際には普段から行われる注意や叱責の意味も含む。生徒目線で言うと「先生に怒られた〜」となるものも懲戒の一種なのである。 懲戒は校長・教員両方が生徒に対して行うことができる。上の文の最後にある、体罰はダメとなっているのは常識だろう。



上述のように、日常的に行われる懲戒は校長も教員もできるが、もっと”重い”懲戒である、退学・停学・訓告の処分は、ふつうの教員ではなく、学校のトップである、校長しか行えない。

学校教育法施行規則第26条第2項

懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校⻑が行う。

はい。ここからちょっとだけややこしいが、義務教育段階での退学や停学についての扱いを確認ししよう。義務教育段階では、憲法にもある通り、教育を受ける権利が保障されているのが大前提である(まだの方は以下の記事を是非ご覧いただきたい)。

まず、停学については「あんたの学ぶ機会を停止する」ということで教育を受ける権利をなくすわけですから、義務教育段階では一切できない。

(なお、停学と似た措置に「性行不良による出席停止」というものがあるが、これは停学ではなく他の児童生徒の学習を保証するという観点から行われるもので、停学とは異なる。この場合は停学ではないため、課題を出すなどして学習する環境を保証しなくてはならない。詳しくは次回の記事で。)



では次に退学の話。退学については以下の4条件のどれかに該当している必要があある。

学校教育法施行規則第26条第3項(退学の要件)

1 性行不良で改善の見込みがないと認められる者
2 学力劣等で成業の見込みがないと認められる者
3 正当の理由がなくて出席常でない者
4 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者

ワルさを働く以外にも、成績や出席面でも退学の条件になるのである。

ここで、さきほどもお話しした、義務教育段階における対応を確認しよう。停学は義務教育段階では絶対にできないが、退学については行える場合がある。

「え!退学の方が重い処分なのに、できるの!?」

と思われるかもしれないが、重い軽いで判断するのではなく、「教育を受ける権利」が保証されるかがポイントとなる。



中等教育学校*1、併設型中学校*2、国立私立の義務教育諸学校については、退学になったとしても、教育委員会の指定する公立学校に就学することが可能。つまり、退学になったとしても、その後公立学校へ転校すれば教育を受ける権利が保証されているため、義務教育段階でも退学の懲戒が可能となるのである。

では演習。

(演習) 次の文の正誤判定をせよ。

(1) 校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、児童・生徒に対し、懲戒として退学、停学及び訓告などの 処分を加えることができるが、体罰を加えることはできない。

→(誤)体罰はダメから正解!っと釣られないように。「校長及び教員」ともに、退学・停学・訓告といった重い処分ができるのではない。それら重い処分は校長が行うものである。一般のヒラ教員はできない。

(2) 学齢児童又は学齢生徒に対する懲戒のうち、退学の処分を行うことはできないが、停学の処分については行うことができる。

→(誤) 学齢児童又は生徒(=義務教育の子ども)については教育を受ける権利を奪うことになるため、停学は絶対に認められない。前半の退学については国立私立の学校の場合など、義務教育段階でも可能な場合があるため、選択肢は誤りとなる。

(3) 公立の中等教育学校における、学力劣等で成業の見込みがないと認められる生徒に対する懲戒については、退学の処分は、前期課程及び後期課程のいずれの課程でも行うことができる。

→(正) 中等教育学校の前期課程といえば中学校に相当するもので義務教育段階であるが、中等教育学校の場合は退学になっても公立の中学校へ転学可能のため、退学の懲戒ができる。中学生で退学処分とはかわいそうな気もしますが…

なお、今回登場した「中等教育学校」、「併設型中学校」に関係した記事は以下からどうぞ。

【解説011】中等教育学校、併設型中高では入学者選抜ナシ

2017.12.23

【解説012】正規の学校は幼・小・中・高・大と、2校種を結合した義務教育学校、中等教育学校、高等専門学校、そして特別支援を加えた合計9校

2017.12.23

今回は以上。おつかれさまでした。

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