【解説029】性行不良による出席停止の要件は、「性行不良」かつ「他の児童生徒の教育の妨げになる」こと

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今回の「性行不良による出席停止」、そして前回記事の「懲戒」に関する話題は、全国の自治体で頻出の内容である。

性行不良による出席停止の要件は、「性行不良」かつ「他の児童生徒の教育の妨げになる」こと

前回の記事でも述べたように、義務教育諸学校の⽣徒へは、停学の懲戒処分ができない。

【解説028】生徒への重い懲戒である退学・停学・訓告は校長が行う。また、義務教育の停学は絶対できない。

2018.01.07

しかし、懲戒という観点からではなく、「他の児童⽣徒の義務教育を受ける権利を保障する」という観点から、「性⾏不良による出席停⽌」は⾏うことができる。

まず性行不良とは何を表すのか、次の法律で規定されている。



学校教育法第 35 条

市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。

1 他の児童に傷害、⼼⾝の苦痛⼜は財産上の損失を与える⾏為
2 職員に傷害⼜は⼼⾝の苦痛を与える⾏為
3 施設⼜は設備を損壊する⾏為
4 授業その他の教育活動の実施を妨げる⾏為

まぁどれも周囲にワルさを働く行為である。こういった「性行不良」であることと、そして「他の児童生徒の教育の妨げがある」2つの条件が満たされる場合に、出席停止を行うことができるのだ。

出席停止制度の適切な運用について:文部科学省

では具体的な手続きの説明にうつる。公立の義務教育諸学校における、性⾏不良による出席停⽌は「市町村の教育委員会」が権限をもち、次のような⼿続きで⾏われる。

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いきなり出席停止にするのではなく、まず保護者からの意見を聞き、その上で書面で保護者に対して出席停止を命じる。



出席停止の命令は「区市町村の教育委員会」から「児童生徒の保護者」に対して行われることに注意しよう。

また、出席停止の期間については、具体的には決まってないが、できるだけ短い期間にせよ、ということになっている(学校教育法第35条)。

e-Gov法令検索

出席期間中の教育について。出席停止でも教育を受ける権利があるため、学習に対する支援を行う必要がある(出席停止になるぐらいの児童生徒なので、その指導は難しいことが予想されるが)。出席停止期間が終われば、出席停止は解除される。なお、該当児童生徒の状況次第では早めに解除になる場合もある。

では、演習。

(演習) 次の文の正誤判定をせよ。

(1) 校長は、性行不良であって、他の児童・生徒の教育に妨げがあると認める児童・生徒の保護者に対して、その児童・生徒への懲戒として出席停止を命じることができる。

→(誤) 出席停止は「校長」ではなく「区市町村の教育委員会」が命じる。出席停止は「区市町村の教育委員会」から「児童生徒の保護者」に対して行われる。また、後半の「懲戒として」もダメ。出席停止は懲戒ではない。

(2) 出席停止とは、児童・生徒の教育を受ける権利に関わる措置であることから、3日以内とするものと定められている。

→(誤)期間は特に定められていないためバツ。



(3) 区市町村の教育委員会は、他の児童・生徒の教育を妨げることはないものの、施設又は設備を損壊する行為を繰り返し行う性行不良の児童・生徒がいる場合には、その保護者に対して、当該児童・生徒の出席停止を命じることができる。

→(誤) ちょっと難しいが、出席停止のためには「性行不良」で、かつ、「他の児童生徒の教育の妨げがある」必要がある。そのためこれは条件が満たされていないので、出席停止を命じることはできない。

ただ個人的には、「学校の施設を壊しまくっている児童生徒ではあるが、他の児童生徒の教育を妨げることはない」ということが実際に起きるのか不思議に思う。(設備を何度も損壊させているのだから教育を妨げていることになると思うのだが)。平均点を下げるためのやや無理な出題といえよう。

今回は以上。おつかれさまでした。

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