きょうさい対策ブログ

主に東京都・神奈川県・埼玉県の教員採用試験(教採)の対策にどうぞ。

【解説051】近代教育史始まり1650〜1750年頃。世界初の絵入り教科書コメニウス、注入主義ロック、消極教育ルソー

今回から教育史を扱う。今回は17世紀以降の近代の教育界に登場した有名な3人の方々の紹介。

世界初絵入り教科書コメニウス、注入主義ロック、消極教育ルソー

 

コメニウス(1592-1670) チェコ

近代の教育者として一番最初におさえておくべき人物はコメニウス。彼はすべての者が進学しうる単線型の学校制度、カリキュラム、学年、一斉授業など現在の学校制度につながる原型を作った。

 

それまでも学校ぽいものはあったのだが、年齢もやることもバラバラであった。現代の学校に近いものがコメニウスの登場でできることになったというわけである。

 

コメニウスの有名な著書として、2冊あげておく。

『大教授学』

 →コメニウスの教授思想・技術が書かれた本です。「あらゆる人に、あらゆる事柄を教授する普遍的な技法を提示する大教授学」

『世界図絵(せかいずえ)』

 →世界初の絵入り教科書といわれるもの。文中の数字と図中の数字が対応しており、絵を見ながら文字を獲得していけるような構成。現在では教科書に絵があるのは当たり前だが、当時としては身分の上の者の「文字」と、身分が下の者でもわかる「絵」を結びつけたという点が画期的であったのだ。『大教授学』内にもあるコメニウスの「あらゆる人に」教育をしたいという思いが現れている。なお、Amazonで1000円ぐらいで訳本が買える。

 

コメニウスのキーワード

『大教授学』、「あらゆる人に、あらゆる事柄を教授する」、世界初の絵入り教科書『世界図絵』、直観教授、「人間は、被造物のうち最高の、最も完璧な、最も卓越したもの」

 

 

ロック(1632-1704) イギリス

世界史の名誉革命とかで出てくる偉大すぎる思想家。教育についても影響を与えている。ロックの特徴は、後に紹介するルソーと比べて、ガンガン教育してやろうという姿勢が強いことである。

 

ロックは人間が生れながらに神の観念や特定の道徳的な傾向を持っているという考えを否定した。人間は目の前の快楽に走り、どのような手段を使っても苦痛を避けようとする、だからこそロックはそうした欲望を理性によって制御することが必要だと考えたのだ。子どもの心は文字が全く書かれていない白紙(ダブラ・ラサ)のようなもので、良き習慣を形成して徳の涵養へつなげることが重要と主張。

 

ロックの有名な著書はたくさんあるが、教育関係として次の2冊をあげておく。

『人間知性論(人間惰性論)』

→ダブラ・ラサの説明が書いてある。生得説の否定。

『教育論(教育に関する考察)』

→しつけに関する記述が大部分を占めている。子どもは理性が十分に備わっていないので、親がそれを肩代わりしなければならない、とも。

 

ロックのキーワード

『教育論(教育に関する考察)』、『人間知性論』、ダブラ・ラサ(白紙)、「この世の幸福とは、健全な身体に宿る健全な精神の状態である」

 

ルソー(1712-1778) フランス

ルソーも偉大すぎる思想家だが、教育に関する思想は上で述べたロックとはだいぶ雰囲気が違う。

「子どもの発見」という言葉を聞いたことがあるだろうか。子どもには心身の発達に応じた教育が必要で、大人と同じことを押し付けるような教育観は人間性を押し殺すだけでやってはいけないとルソーは主張した。(大学の授業で、ルソー以前と以後の絵画に子ども観の違いを見ることができる、という話を聞いた覚えがあります。ルソー以前の子どもは単に大人を小さくして描かれているのに対して、ルソー以後は子どもらしい表情をかくようになっている、というような話です)

 

今で言えばまぁそりゃそうだろうとなるが、当時は子どもの発達に応じた教育という考えは一般的ではなかったわけだ。ロックの方はガンガン鍛えてやろうという姿勢であったが、ルソーの方は本来子どもが持っている良い部分を伸ばしてやろうという感じで、「消極教育」とか「自然教育」とかいわれることもありる。

 

次の著作はルソーのめちゃめちゃ有名な作品。

『エミール』

→エミールという一人の男の子と、その家庭教師のやり取りをフィクションとしてかいたもの。乳児期、幼児期、少年期、思春期、青年後期の5篇に分かれており、各成長過程に応じた教育の仕方を書いている。

 

ルソーのキーワード

子どもの発見、『エミール』、消極教育

 

 

では演習。

 

(演習)

次の文の(     )に適する人物名を、次の選択肢の中からそれぞれ選べ。

【選択肢】

ルソー、ロック、コメニウス、コンドルセ

 

(1) (     )は、世界最初の絵入り教科書「世界図絵」の著者としても知られ、万人に共通の普遍的知識の体系を学ぶ必要を説き、それを確実に学ぶための人間の自然に合致した合理的教育方法を追究した。(2013年実施12)

 

(2) (     )は、「万物をつくる者の手をはなれるときすべてはよいものであるが、人間の手にうつるとすべてが悪くなる」として、子供の自由な成長を保障する消極教育を主張した。(2011年実施11)

 

(3) (     )は、1791年に「公教育に関する5つの覚え書き」を発表し、公教育は国民に対する社会の義務だとする考えを明らかにした。(2015年実施12)

 

(4) (     )は、心を「すべての文字の書いてない、何の観念をも持たない白紙である」として、経験こそが子供の発達に決定的役割を果たすと主張した。(2011年実施11)

 

(解)

(1)コメニウス (2)ルソー (3)コンドルセ (4) ロック

 

(3) のコンドルセ(1743~94)という人はフランスの哲学者・数学者で、「フランス公教育の父」とよばれることもある、公教育の制度を整えようとした人。実際にコンドルセ案という公教育に関する法律を作ろうとしたが、フランス革命の混乱の中で成功はしなかった。

 

参考文献 

教育思想史 (有斐閣アルマ)

教育思想史 (有斐閣アルマ)

 
NHK「100分de名著」ブックス ルソー エミール―自分のために生き、みんなのために生きる

NHK「100分de名著」ブックス ルソー エミール―自分のために生き、みんなのために生きる

 
世界図絵 (平凡社ライブラリー)

世界図絵 (平凡社ライブラリー)