【解説054】1900年前後、社会と教育のつながりを考えた3人。社会的教育学ナトルプ、教育による社会化デュルケム、集団教育マカレンコ

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今回は1900年前後、社会と教育のつながりを考えた3人を扱います。

ナトルプ (1854-1924)  ドイツ

特徴的な名前!。ナトルプは、「新教育」の流れの中で、教育をもっと社会を通じて行うべきだと主張した人物。ヘルバルト派に代表されるような旧来の教育学は個人に対する教育であって、社会のことを考えたものではないと批判し、人は社会の中でのみ成長できると主張。ナトルプは教育領域を学校空間だけでなく、社会にまで広げて行こうとした人、ということができるだろう。

著書に『社会的教育学』。

ナトルプのキーワード
『社会的教育学』

「人間はただ人間的な社会においてのみ人間となる」



 デュルケム(1858-1919) フランス

ナトルプと同一の時期に育った人物である。当時のフランスは人々が経済的な利益獲得競争に走り、「アノミー(欲望の無規制)」状態に陥りかけていた。デュルケムはこうした状態から脱して社会秩序を再建するために、教育の力で社会改革を行おうとしたのである。著書「教育と社会学」の中で、デュルケムは「教育とは、子ども(未成年者)の体系的な社会化である」と述べている。

また、デュルケムは、スペンサー(やカント、ヘルバルト)らが展開している完全性を目指した教育は、神の完全性を目指そうという考えであると批判している。教育の根拠に宗教的な考えを置くのを許さなかったのである。

デュルケムは宗教に依存せず、社会的原理による立場から、道徳教育論を展開した。

デュルケムと上述のナトルプはどちらも「社会」という言葉が前面に登場してきて、ずいぶん雰囲気が似ている(著書のタイトルもナトルプの「社会的教育学」に対してデュルケムの「教育と社会学」と、受験生への嫌がらせか?と思うぐらい似ている)ので、区別ができるようにしておこう。

デュルケムのキーワード
『教育と社会学』

「教育は子どもの体系的な社会化である」

『道徳教育論』



マカレンコ(1888-1939,ロシア→ソ連)

旧ソビエト連邦の教育者として知られる。教育者の権威と規律を重視し、激励と処罰を強調する集団主義教育の理論を打ち立てた。要はビシビシ教育して統率ができるようにしようという内容で、社会主義化を目指す国の方針に合う教育論だったわけだ。

マカレンコのキーワード
集団主義教育

『愛と規律の家庭教育』

平行作用の法則←集団への働きかけが結果的に個人への働きかけにつながる

では演習。

(演習)

次の文の( )に適する人物名を、次の選択肢の中からそれぞれ選べ。

【選択肢】

ナトルプ、デュルケム、マカレンコ、スペンサー

(1) (    )は、教育は成熟した世代が未成熟の世代に対して行う組織的社会化の行為であり、子供は教育を受けることにより、道徳的社会的存在にまで高まりうると考えた。

(2) (    )は、「社会的教育学」で、人間の自意識は、自意識と自意識との交互関係によって発展することを説いて「人は人間の社会を通じてのみ人となる」ことを強調した。

(3) (     )は、教師の集団全体に対する働きかけが、個々人に対してもそれぞれ相応した働きかけともなるという「平行作用の法則」を提唱した。

(4) (    )は、人間の具体的な生活活動を五つの段階に分け、この5段階が十分に発達した状態である「完全な生活」を導くことを教育の目的とした。

(解)

(1) デュルケム (2) ナトルプ (3) マカレンコ (4)スペンサー

(4)のスペンサー(1820-1903,イギリス)は『教育論(知育徳育体育論)』の中で、教育の目的を個人の「完全」な生活を準備することにあると主張した。教育目的に「完全」というワードがあった場合はスペンサーのことである可能性が高い。

今回はここまで!

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