【易しめ解説54】懲戒。義務教育段階での停学はダメ。

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今回は生徒への懲戒に関する内容です。

学校教育法第11条

校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。

殴る蹴る、あるいは肉体的苦痛を与えるなど体罰はいかなる場合もダメです。「部活動で信頼関係がある場合は体罰が許容されることがある」とか「文部科学大臣の定めた場合に限り、体罰を加えることができる」は誤りです。

なお、暴れている生徒を制止するなどで有形力の行使など止むを得ないものについては体罰には当たりません。



また、懲戒というのは普段から行われる注意など軽いものも含まれています。懲戒のうち、退学・停学・訓告の重いものについては校長が行うことになっています。

学校教育法施行規則第26条第2項

懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校⻑が行う。

ちなみに、義務教育段階での退学や停学は基本的には認められません。あまりにひどい場合は他の児童生徒への学習環境を維持するという目的で「性行不良による出席停止」という手段をとる場合もあります。

学校教育法第 35 条

市町村の教育委員会は、次に掲げる行為の一又は二以上を繰り返し行う等性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。

1 他の児童に傷害、⼼⾝の苦痛⼜は財産上の損失を与える⾏為
2 職員に傷害⼜は⼼⾝の苦痛を与える⾏為
3 施設⼜は設備を損壊する⾏為
4 授業その他の教育活動の実施を妨げる⾏為

 (なお、中等教育学校や私立学校など、退学の後に転校できる公立学校がある場合は義務教育段階であっても退学の懲戒が可能ですが、細かい知識なのでそこまでは知らなくてもよいと思われます。)



(演習)

4つ扱います。

(演習1)

次の文は、学校教育法第11条である。文中の[ア]、[イ]に当てはまるものを次の選択肢から選べ。(2011年実施49)
校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に[ア]ができる。ただし、[イ]はできない。
【アの選択肢】体罰を加えること、懲戒を加えること、退学を命じること、停学を命じること
【イの選択肢】懲戒を加えること、体罰を加えること、退学を命じること

(解)[ア]懲戒を加えること [イ]体罰を加えること

(演習2)

学校教育法の条文に照らして、次の文の正誤判定をせよ。(2018年実施47)

校長又は教頭は、性行不良であつて他の児童の教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずることができる。

(誤)出席停止は市町村の教育委員会が行います(学校教育法第35条)

続いて具体的事例を交えた問題です。

(演習3)

学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方についての記述として適切ではないものを、次の①〜⑤のうちから選びなさい。(2017年実施47)
①携帯電話を児童生徒が学校に持ち込み、授業中にメール等を行い、学校の教育活動全体に悪影響を及ぼすような場合、保護者等と連携を図り、一時的にこれを預かり置くことは、教育上必要な措置として差し支えない。
②単に授業に遅刻したこと、授業中学習を怠けたこと等を理由として、児童生徒を教室に入れず又は教室から退去させることは、当該授業の間、その児童生徒のために当該授業に代わる指導を別途行うのであれば、懲戒の手段として行うことは差し支えない。
③用便のためにも室外に出ることを一切許さない、又は、食事時間を過ぎても長く留め置く等肉体的苦痛を与えるものでなければ、児童生徒を放課後等に教室に残留させることは、通常体罰には当たらない。
④個々の懲戒が体罰に当たるか否かは、懲戒を受けた児童生徒や保護者の主観的な言動のみによって判断されるものではない。
⑤他の児童生徒に被害を及ぼすような暴力行為を行なっている児童生徒に対し、目前の危険を回避するためにやむを得ずした有形力の行使であっても、有形力の行使である以上、体罰に当たる。

(解)⑤

暴れているのを抑えるなど仕方のない有形力の行使は止むを得ないですから体罰には当たりません。

(演習4)
次の文は、問題行動を起こす児童生徒に対する指導や懲戒に関して述べたものである。適当でないものを、次の①〜⑤の中から一つ選びなさい。(2006,2009年実施)
①学校が、規範意識を育む指導やきめ細かな教育相談等を粘り強く行うことを継続してもなお改善が見られず、いじめや暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対しては、正常な教育環境を回復するため必要と認める場合は、出席停止の措置がためらわずに検討されるべきである。
②放課後等に教室に残留させることは、児童生徒に肉体的苦痛を与えるものでない限り、通常体罰にはあたらない。
③携帯電話を児童生徒が学校に持ち込み、授業中にメール等を行い、学校の教育活動全体に悪影響を及ぼすような場合、保護者等と連携を図り、一時的にこれを預かり置くことは、教育上必要な措置として差し支えない。
④懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあつては、学長の委任を受けた学部長を含む。)がこれを行う。
⑤懲戒のうち、停学の処分は、学齢児童又は学齢生徒に対して行うことができる。

(解)⑤

停学は義務教育段階ではダメです。

今回はここまでです。

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